ティール組織は理想論?
13 Aug 2020前々から読もうと思っていたが読む機会がなくて積ん読状態になっていた『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』をようやく読んだ。
読むまでティール組織について憧れみたいなものがあったが、現実を見れば見るほど理想論のように思えてくる。現在の自分の状況にうまく落とし込めるかどうか想像しながら読んだけど難しそうだ。
本書の内容を平たくいうと、 歴史を見ると組織構造は進化していて、衝動型(レッド)組織(マフィアとか力・恐怖による支配)、順応型(アンバー)組織(教会や軍隊)、達成型(オレンジ)組織(多国籍企業)、多元型(グリーン)組織(多様性と文化を尊重)という組織構造だったが新たに進化型(ティール)組織というものが出てきており、この進化型組織というものは、
- セルフマネジメント
- ホールネス(全体性)
- 存在目的
という3つの要素で構成されている。
組織の存在目的の沿って構成員は自主的に仕事を決定・遂行し(セルフマネジメント)、最大のパフォーマンスを発揮するために仕事用の仮面を被らずにありのままの自分で仕事をする(ホールネス)、ということがティール組織の特徴であるとされる。
なかなか面白い本だと思ったが読み手を選びそうだと思った。というのは、ティールのパラダイムに親しんでいないもしくはその素養がないと読むのが苦痛になりそう。
達成型のパラダイムに染まっていてその中で戦っている人にとっては本書がティール組織に言っていることが「何うだうだ言ってるの。そんなの言う暇あったら結果出してよ。」と思うだろう。
達成型のパラダイムでの成功体験があり、その信奉者であれば、 交換可能な機械部品とみなす労働者たちを統制して利益の追求、競合との勝利することを重視しているから、 統制を放棄して組織の存在目的になぞらえて各チーム・各個人にセルフマネジメントさせるティールのパラダイムと相入れないだろう。 そんなんで成果出るんか?という結論にいたるはず。
組織の存在目的については達成型のパラダイムであっても批判はなさそうだし、ホールネスも許容はしそうだが、ホールネスを発現できるのは一部の人だけに限られる。
結果が全てのため、結果がついてこない人は「恐れ」がついて回るため自分を曝け出せようもない。
じゃあ達成型の組織はいつまでもティールにはなれないのだろうか?
本書によると「無駄な努力はやめたほうがいい」とのことである。
上層部にティールのパラダイムの理解がないと、管理者の統制を放棄する「セルフマネジメント」がまず許容できないからだ。
確かにそれは納得で、
「できるやつ」が「できないやつ」をうまく統率することで成果はあげられる。
「できないやつ」にセルフマネジメントさせてしまうと、「できるやつ」の基準で物事を考えられないから成果は出なくなるわけで、「できるやつ」が絶えず基準を押し上げていかなければ成果は伸びていかない。
スキルレベルが高いチームであれば、集団的知性が働いて局所的にはうまくいくかもしれない。 が、強いリーダーシップが無ければその船は沈没してしまいそうだ。
と、ここまで否定的に書いたものの、ティール組織について羨ましく思うこともある。
明確な組織の存在目的に沿って、なにものかの仮面を被らずにプロダクトのためにプロダクトを作れたらどんなにいいことか。
何のためにプロダクトを作るのか、なぜそのプロダクトに関わっているのか、 これらの理由は人それぞれで、 給料高いとか、最新技術を使っているからとか、いろいろあるけれど、 自分の場合は、自分の力を社会に役立てられるものに使ってもらいたいという欲があるせいか、組織の存在目的になぞらえることと、ホールネスというものに強くあこがれる。
書きながら気づいたけど、自分は「セルフマネジメント」はそれほど重要視していないな。
ホールネスがあるのと組織の存在目的が自分のやりたいこと・成し遂げたいことの方向性がマッチしてればいいのかもしれない。
ティール組織に入るにせよ、作るにせよ、既存のを組み換えるにせよ、 達成型のパラダイムの向こう側に行くには達成型のパラダイムで勝ち抜いてから。 そうじゃないと結局ティール組織になっても沈没するわけで。